『新・観光立国論』のレビューその2

4月は通訳ガイドの仕事が忙しかったです。私のようなぺーぺーでも4月だけは忙しくなるようにできているようです。

観光ガイドの仕事をしているので、英語だけでなく日本の観光についての勉強もします。そこで、今日はそのことについての本を紹介します。

以前にレビューを書いたことをすっかり忘れて、またレビューを書いてしまいました。

『新・観光立国論』のレビュー

これはなかなか示唆に富む本でした。イギリス人の元アナリストが、日本の観光ビジネスのダメなところをバシバシと指摘する本です。厚切りジェイソンと同じで、だから日本はダメなんだよという指摘の連続なので、読んでいてムカつきますが、まあ正しいことも言っているのでそこはちゃんと聞き入れましょう。

日本の観光でダメなのは、

  1. 押し付けのおもてなし
  2. 客が求める物の整備が足りない
  3. 富裕層向けのサービスが無い

ということだと私はこの本を読んで解釈しました。

1については、近年日本人はおもてなしのレベルの高さを誇っていますが、観光客はそんなもののために日本に来るわけではないということが書いてありました。むしろ、旅館やレストランの日本式のおもてなしは、供給側の都合を押し付ける物が多いと著者は書いています。

通訳ガイドという仕事は、お客さんにおもてなしをする仕事なわけですが、日本人がイメージするおもてなしを外国からのお客さんは求めていないのではないか、という視点は大事だと思います。じゃあお客さんは何を求めて日本に来ているのかということは、次の点になります。

アトキンソン氏は、観光で大事な要素は次の4つだと述べています。

  1. 気候
  2. 文化
  3. 食事
  4. 自然

これはなかなか納得できます。ガイドとしてお客さんと接していて、上の4つの要素に関することはお客さん自身のコメントからよく聞きます。

日本の4月は気候がちょうど良いので、天気の良さと過ごしやすさは、よくお客さんが口にします。

文化は言わずもがなですね。例えば京都を案内する時は見るべきものがたくさんあります。ほとんどのお客さんは歴史的な建築物への興味が強いです。

食事も大事ですね。寿司や味噌汁など、固有の日本料理について興味のあるお客さんは多いです。

最後に自然ですが、山や川、または花などについてお客さんは楽しみにしています。これはガイドをやるまで気づいていませんでした。やはり日本と言えば桜なんですね。桜って学校とかにたくさん咲いてるから、日本に居ると意識しなくなるんですよね。でもお客さんにとっては桜を見に来るというのは日本に来るメインの理由になり得ます。

お客さんは大まかに言って上の4要素を求めて日本に来ていることが多いです。すると通訳ガイドの役割というのは、それらをお客さんが楽しむための手助けをすることだと思います。日本人の考えるおもてなしは求めていないことも多いでしょう。

ガイドとしてのふるまいを考えてみると、例えば日本人を相手にしたガイド業ではお辞儀の角度や、書類は両手を使って渡すとか、そういう礼儀正しさが重要視されますが、海外からのお客さんはたぶんそんなことは求めてないでしょうね。そういうおもてなしではなくて、分かりやすく案内をし、興味深い話をしてくれるガイドを求めていると思います。あとは観光地での自由時間中にお菓子食べていようが問題ないと思います。

また最近の「日本のここが凄い」みたいなニュースでやりがちなのが、例えばマンホールに模様が書いてあって面白い、みたいなネタですが、こういうのは観光には全く結びつかないと書いてありました。ただ珍しいだけですので。また、日本の治安の良さや日本人の行儀の良さも、観光には結びつきません。お客さんはわざわざマンホールや治安の良さのためにはるばる日本にまでやって来るわけではないからです。

日本は上に挙げた4つの要素が豊富にある国です。現状ではそれを上手く活かしていないので観光ビジネスがフランスやアメリカのように上手く言っていないとアトキンソン氏は言っています。

それは日本は富裕層にお金を使ってもらうビジネスが弱いということとも関連しています。日本人は平等意識が強いので、お客さんにも公平なサービスを提供しようとするんですよね。追加料金を取ってプラスのサービスをするという発想の方が世界では一般的だと書いてありました。

日本人の平等意識は、日本が今の姿をしていることの理由でもあると思うので、私は平等意識が強いという日本人の性質を大事にして欲しいと思います。でもそれじゃあ儲からないということなんですね。この本に書いてあるのは。

全体を通して、観光ビジネスをする上でとても大切なことが書かれた本だと思います。通訳ガイドを目指している人も是非、一度読んでみると良いと思います。

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