前回の記事で、『句動詞の底力』という本を紹介しました。
この本の内容が凄く良かったので、著者であるクリストファー・バーナード氏の本を他にもいくつか読んで見ました。どれも良い本ばかりなのですが、今回はこちらの本を紹介します。
『句動詞の底力』では、英語は空間の言語であると説明されていました。そして、空間について言及する前置詞や副詞が文の中で重要な役割を占めるとのことでした。
この本は、まさに『句動詞の底力』の実践編とでも言うべきもので、英語の特徴を踏まえた上で、有効な学習法を提示してくれる本でした。
言ってしまえばこの本は1000個の熟語のリストなので、単語集の1種ではあります。句動詞が単に1000個並んだだけの本ならば、特筆すべきものはありません。この本の素晴らしいところは、前置詞や副詞を中心に熟語が配列されているところです。
例えばacrossの頁ではcome across やget acrossのように、acrossと動詞を組み合わせた句動詞が並べられています。普通の熟語集では、動詞を中心に配列されると思います。すると、動詞の方が前置詞よりも数が多いので、項目の数が多くなりすぎて、覚えにくくなります。
また、英語は空間の言語であり、日本語と違って動詞よりも前置詞や副詞が意味の中心を占めることがある言語です。その意味で、前置詞や副詞を中心に編集されていた方が、似たような意味を持つ熟語が同じ頁に並ぶことになるので、より前置詞とそれが生む熟語の意味を印象付けやすくなります。
この本で句動詞を学習すると、前置詞や副詞を中心に英語の文章を組み立てるようになります。よりネイティブの英語に近づくことになるでしょう。
ただ、ネイティブの英語に近づくことが良いことなのかは分かりません。この本に載っている句動詞は、ちょっとこなれ過ぎていて、非ネイティブ相手に使うと、分かってもらえないかもしれません。英語学習で苦戦しているのは、日本人だけではないのです……。
例えばtake in という句動詞はこの本では10個の使い方があることになっています。その中で2つ挙げると、「理解する」と「雇い入れる」があります。確かに、take in ならば取ってきて引き込むようなイメージがあるので、理解すると雇い入れると言う意味は推測できます。しかし、それぞれunderstand やhire と言った方が数倍分かりやすいような気がしますね。ネイティブはどう感じるんでしょうかね。
と言うわけで、この本に載っている句動詞をどこまで使うかという難しい問題は残りますが、前置詞や副詞を中心に編集した熟語集は、英語の、より本質的な部分を理解しながら学べると思いますので、この本は素晴らしいと思います。