発音の良さは大事か?

最近の英語学習界では、発音の良し悪しがよく話題に登っているように思える。どんなに正確に英語の読み書きができても、カタカナ英語では通じない、というような話です。流行りのフィリピン人とのオンライン英会話や、フィリピン留学も発音矯正コースをウリにしている学校があるようです。

これは確かにその通りで、私もフィリピンやシンガポールに行った時に、カタカナ英語は全然通じないな、と思いました。中学生は恥ずかしがって授業で英語らしく発音しないけど、それではせっかく英会話できるだけの英語処理能力を身につけても外国人に全然通じないのでもったいないと思います。

他には、発音が下手だと頭が悪そう、話を聞いてもらえない、という説もまかり通っていますね。

でも、私は最近は発音の良し悪しはあまり大事じゃないと考えています。

そもそも、発音が良いとはどういう意味でしょうか?

  • Rの音が巻舌になっている
  • waterがワラみたいに発音される
  • thの音が、スッ、って空気が抜ける感じ

とかですかね?日本人が憧れる、英語らしい発音ってだいたいそんなところだと思います。

でも、上の2つ、Rの巻舌と、waterがワラになるのって、実はアメリカ英語の発音に過ぎません。まずイギリス英語では、語の先頭、又は母音の前以外の場所にあるRはほとんどの場合発音されません。日本人が、英語の正しい発音の代名詞だと思ってる巻舌の発音を、イギリス人はしないのです。

Rの代わりに、「シュワ」っていう発音をします。シュワって変な名前ですが、本当にそういう専門用語なので仕方が無いです。シュワっていうのは何も発音しないような発音のことです。

waterについては、「藁」って発音すると通じるとか言われていますが、イギリス英語ではTの音をちゃんと発音するので、ワータに近い感じです。最後のRは発音しませんので最後は伸ばしません。イギリス英語を使う相手にはwaterは「藁」って言うより「綿」って言った方が通じます。私はタイ人と英語で話していて、相手が「綿」って言うのが何か分からず、相手は私が「藁」って言うのが何か分からず、困惑したことがあります。たまたまそのタイ人がRの発音についてイギリス式だったのだと思います。

つまり、現代の中学校で習っている「英語の正しい発音」というのはアメリカ人の英語に過ぎないのです。英語の発祥の地、イギリスではちょっと違った風に発音されている。これでは、一体どちらが「正しい発音」なのでしょうか?

でもアメリカ英語が世界のスタンダードだから……と言う意見もあるかもしれません。ところが実はそうではなく、イギリス英語でもアメリカ英語でもない英語を話す人は世界でたくさん居ます。有名なのはTOEICでお馴染みのカナダ英語、オーストラリア英語などですね。オーストラリア英語でもRは巻舌で発音されないので、既にRの巻舌が世界の標準ではないことが分かると思います。

TEDという動画サイトが、英語学習者の間で人気があるようです。英語の学習に使われたり、上手なスピーチのお手本にされています。確かにこのサイトで視聴できるプレゼンテーション、どれもめちゃくちゃ上手いです。

でも、いくつか動画を見ると、発音がアメリカ英語じゃないことが多いことに気づくと思います。中には、アメリカ英語を「標準」と考えていると、訛っているなぁと思うような発音の人もTEDでスピーチしてます。マララさんの父のスピーチなんかがそうです。そしてそのスピーチは、やはり上手いです。

発音が上手くない(その国の訛りがある)と話を聞いてもらえないと言うのも、既におかしいというのが分かると思います。TEDで話している日本人の英語も、カタカナ英語ですが、英語としてもスピーチとしても上手いんです。例えばこのスピーチなどです。

私はフィリピンに1週間だけ留学した時、発音矯正の授業を取っていました。RとLの発音などを、マイ・フェア・レディみたいに厳しく指導されていました。worldとか、かなり苦戦しましたね。

でも、今思えば、別に発音の練習なんか一生懸命しなくても良かったな、という感じです。Rの音が苦手なら、発音しなきゃ良いんです。イギリス英語みたいに。Rはイギリス英語でscheduleはアメリカ英語、とか好きな英語を組み合わせれば良いと思います。

と言うわけで、アメリカ人やフィリピン人相手に英語が通じない時に、多少、彼らの発音のように巻舌をやったりして言い直したりする必要があるかもしれませんが、発音を勉強する意味はその程度のものだと思います。

アメリカ英語に近い発音=正しい発音と思い込み、巻舌の発音とかをわざわざ練習する必要は無いな、と私は思ったのでした……。

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