私のハンドルネームはグプタでございまして、これはもちろん、ドラクエ3でカンダタに恋人を誘拐されたグプタから取ったわけではなく、TOEICの登場人物のグプタから取りました。清涼院流水さんが書いたこちらの小説
DL特典付 不思議の国のグプタ―飛行機は、今日も遅れる
オススメ度(5段階) ★★★★
でネタになっているので、面白いなぁと思ってハンドルネームにしました。
TOEICの問題文の本文は、フィクションです。例えば石油を巡る国際情勢や、あるアメリカ大統領の偉業など、現代社会や歴史をテーマにした内容は絶対出ません。知ってる人と知ってない人で差が付いてしまうからです。そうしたら英語力を計る試験になりません。だったらフィクションにすれば、知識による有利不利がありません。純粋な英語力を計ることができます。たぶん。
ただ、フィクションにしたことによって、何故かそのストーリーは奇妙な特徴を持つようになりました。TOEICの問題文では、いつも飛行機は遅れますし、図書館は閉館しています。人の名前にも特徴があり、何故かグプタという名前の人物がよく出てきます。
そのストーリーのクセというか、「あるある」をネタにした小説が『不思議の国のグプタ』なのです。
小説の前半は、TOEICのあるあるを楽しめるような内容になっています。TOEICマニアの方々なら絶対面白いと感じると思います。
私は後半部分のクライマックスに差しかかっていくところが気に入りました。詳しくは書きませんが、グプタが世界の秘密に気づいて、掟を破ろうとするところなんか、
トゥルーマン・ショー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
みたいなスリルを味わえました。
というかトゥルーマン・ショーとは話がかなり似てますね。ミステリーやSFなどが好きな人なら、『グプタ』はありきたりなプロットと思うかもしれません。作られた世界の秘密に気づくのは、確かに目新しい発想ではないです。清涼院流水さんのようなベテラン作家なら、すぐに書けてしまうのではないでしょうか。
それでも、私は『グプタ』は素晴らしい小説だと思います。ミステリーにありがちなプロットを、TOEICを題材にしてやってしまうところが凄いのです。TOEICの問題を作っている人たちは、英語力を計るというミッションのために、文学や歴史などの臭いを消し去った無味乾燥な世界を表現しようとしているのだと思います。普通の日本人にとってTOEICは無味乾燥な英文でしょう。しかし逆にそれをコンテンツとなってしまった、というところが面白いのです。一流の作家にかかればどんな材料も小説になってしまいます。
この本を読んで
「TOEIC対策の役に立たない」
という声をたまに聞きますが、そりゃそうだろう、と思います(笑)
これを読んでスコアが上がることは無いでしょう。ストーリーの傾向を知ることはできますが。
そうではなく、TOEICをコンテンツとして楽しむことができるようになる、ということが『不思議の国のグプタ』の素晴らしいところです。だから私はグプタなんです。