英語学習においてシャドーイングや音読が効果的であるとはもはや一般的に言われていますが、何故効果的なのかは実際のところよく分かっていないと思います。ただ、安河内哲也先生みたいに実際に英語が物凄くできる人が音読は大事だと言うので、やっぱり効果があるのかな?と経験的に感じていました。年末のRed Bullさんのセミナーでも徹底的な音読が推奨されていましたし。
しかし、Twitterで出会うTOEIC満点取得者は、必ずしも音読推奨派ではなかったのです。あ〜るさんというTOEICで満点を何度も取ってらっしゃる凄い方のツイートで
少なくともTOEICのリスニングでは、本番当日に会場でやらされることは「答えを選ぶこと」だけです。声出しすることではありません。つまり本番に向けた実戦練習としては、答えを選ぶ練習をすれば十分なはずなんです。それがなぜか練習では、必ず声出しまでせよと言われる。謎と言えば謎です。
音読推奨派だった私は、あ〜るさんの発言で、ブレまくっていました(笑)確かに、TOEICは声を出さない試験です。だったら何故TOEICの対策で音読をが推奨されているのだろう?と。
私は音読の重要性を再確認するために、外国語習得における音読の重要性を科学的に説明した本を読んでみることにしました。やはり、何故やるのか?ということを理解したうえでやった方が良いと思うからです。 仕事でも、上司の命令に対してその効果に疑念を抱きながらやっていては成果は出せません。自分が納得して取り組んだ仕事の方が成果が出ませんか?
この本です。
オススメ度(5段階) ★★★★
以下、本の内容を要約していきます。大きく分けて3つの内容で説明します。
- シャドーイングをするとリスニング力が向上する
- 音読をするとリーディング力が向上する
- シャドーイングと音読をすると英語(外国語)を長期記憶しやすくなる
まずシャドーイングをするとリスニング力が向上することについて説明します。
リスニングという行為は、
音を知覚する→意味を理解する
という段階を経ます。母語の場合は知覚の段階が自動化されており負荷がほとんど無く、次のステップである理解に使う時間が充分に取れるため、容易にリスニングを行うことができます。しかし外国語の場合は音を知覚するだけで大きな負荷がかかります。すると意味の理解に使える時間が足りず、例えばTOEICで言えば次の音声が流れてきてしまい、聞き取りができない状態でテストが進行してしまいます。実際の英会話では相手に聞き返す必要が生じてくるでしょう。
シャドーイングは聞こえてきた音をそのまま発音する行為です。これは、音を知覚する行為を自動化するトレーニングになります。このトレーニングを徹底的に行うことにより、知覚が自動化され、意味を理解するために多くの時間を使えるようになります。つまりネイティブの聴覚処理に近づくことができます。
次に、音読をするとリーディング力が向上することについて説明します。この本では、音読とリーディングの関係は先ほど述べたシャドーイングとリスニングの関係とほぼ同じ論理で説明しています。
リーディングという行為は
ディコーディング(文字の解読)→意味を理解する
ディコーディングとはリスニングで言えば音を知覚する段階にあたります。具体的には
- 文字を見て認知する
- 知っている語彙として認識する
- 文字を心の中で発音に変換する
という脳内の作業のことです。黙読していても、大抵の場合は心の中で文字を発音していると思いますので、文字を心の中で発音に変換するという段階を踏みます。認識した文字を心の中で繰返し発音することで記憶を保持し、次の理解の段階に進めることができます。ディコーディングの次の、理解する段階では、リスニングとほぼ同じ脳の働きで処理されます。
リーディングは文字を音に変換するので、実はリスニングよりも1ステップ作業が多いことになります。音読は、文字を発音に変換することを声を出して積極的に意識した形で行うことによって、ディコーディングの自動化を目指す練習になります。自動化ができれば理解に多くの時間を使うことができるのもリスニングと同じです。リスニング同様、知覚段階を自動化することが、ネイティブの処理に近づく方法であるということです。
最後に、シャドーイングと音読によって英語を長期記憶しやすくなることついて説明します。
人が短期記憶を長期記憶に変えるルートには、映像的な記憶と、エピソード記憶と、言語記憶があります。語学学習の暗記においては言語記憶が主になります。言語記憶は、脳内で単語や文の発音を何度もループさせることによって、短期記憶から長期記憶に転化されます。
聞いた音は、約2秒間は脳内に保存されますが、その間に脳内で何度も復唱しなければ忘れてしまいます。2秒間に何度も復唱するためには、音を知覚したり文字を見てから脳内で発音に変換するスピードを増やす必要があります。ネイティブはその過程が自動化されているので、復唱するのが速いため、単語や文を長期記憶に転化させやすいのです。
その過程を自動化するためのトレーニングが、シャドーイングと音読である、というわけです。認識した単語や文を脳内でループさせる作業が高速化されることによって、短期記憶を長期記憶に変えやすくなるのです。
以上がこの本の、シャドーイングと音読が語学学習で効果的であることを説明した部分の要約になります。本文ではもっと実験やデータを用いて論理的に説明されていますので、詳しく知りたい方は是非読んでみることをオススメします。
ではこの説を踏まえて、どのようにシャドーイングや音読を英語学習に取り入れたら良いのか?という話については、また別の記事で書くことを予定しています。