『キクタン英検1級』は意外と良いです


オススメ度(5段階) ★★★★

英検1級が近付いているので、私は受験しませんが単語集の紹介を。

英検1級の単語集と言えば決定版は

かと思います。確かにパス単は英検1級によく出る単語も出そうな単語も網羅しています。

しかし、旺文社の単語集らしく、堅いですね。大学受験の英単語ターゲット1900みたいな、

単語 意味 例文

という伝統的な構成で、音声にも工夫がありません。

対してキクタンは見出し語が900と少ないため、重要単語の暗記には良いです。音声にも工夫があり、キクタンシリーズでお馴染みの

英単語 意味

をひたすら繰り返すCDとなっています。英検1級の単語は難単語が多いから、こういう力づくの暗記は向いていないという意見もあるかもしれません。ですが私は逆に、難単語だからこそ、そもそも意味を知ってる知らない以前に見たことすら無い単語が多いため、まずは音でその単語の存在を認識することが大事だと思います。単語の連呼を聞いていると、意味は知らないけど単語の存在は知っているという状態になります。例えば

altruism

という単語を聞いていると、利他主義という意味は覚えられなくとも、altruismという音や文字列は覚えます。その後、繰返しキクタンでの学習を続けたり、他の問題集で意味を定着させていけば良いと思います。

決定版はパス単ですが、その前に英検1級の基本語彙を定着させるには、まずはキクタンがオススメです!

※私は英検1級はまだ合格していません(1次試験があと5点でした)ので、あくまで不合格者の意見としてご参考にしてください。

『ネイティブの瞬発力が身につく!超「速音読」英語勉強法』の感想

ネイティブの瞬発力が身につく! 超「速音読」英語勉強法
オススメ度(5段階) ★★★

最近英語の勉強をしていないので、今までに読んだ英語関連の本を紹介していきます。オススメ度の高いものも、低いものも紹介していこうと思います。

この本の主張は至ってシンプルです。

英語を身につけるためには音読が最も適している

というもの。著者の実体験に基づいて、いかに音読が有効であるか、また音読学習を続けていくためのコツがいくつか書かれています。私のブログでも何度か書いてきましたが、英語がめちゃくちゃできる人は、やはり音読をしていますね。

私自身、音読の効果は身を持って体験しています。普通に問題集を解いてても上がらなかったTOEICスコアが、音読を1ヶ月集中してやっただけで900点を超えましたのでね。こちらの記事に書きました。

私がTOEICで900点を突破した方法

音読が有効だと分かっていて自分なりの音読のペースが掴めている人にとっては、あまり目新しい情報は無いかもしれません。情報というよりは、音読でTOEIC満点を始めとする素晴らしい英語力を手に入れた人の体験記、として凄く価値があると思います。そういう音読が効果があったという「証拠」があった方が継続して頑張れますから。特に、音読は地味なトレーニングですし。

得られた情報としては、著者が提唱しているのが

速音読

であることです。いかに音読をするべきかというのは大事なテーマですが、とにかく速く読むという一つの方法論を示して、それによって成果を出したという情報は有益でした。ただ、世の中にはゆっくり音読しなさいと言う人も居て、成果も出ているようですから、速く読むのが最も効果的というわけではないと思いますが。

音読やシャドーイングの効用を説いた本でしたら、科学的に説明した『シャドーイングと音読の科学』の方が読み応えがあって私は好きでした。何故シャドーイングや音読が効果的なのか、科学的な視点から知って、理解を深めた上で勉強したいという人にはこちらの方がよりオススメです!

『語源でたどる英単語まんだら』のレビュー

今日は一風変わった単語集を紹介します。

語源でたどる英単語まんだら
オススメ度(5段階) ★★★★

語源系の単語集は、いくつも読みました。中でもこの本は、語源から各単語に広がっていくことを独特の図で表現しており、とても面白いです。まんだら図に見立ててまんだらという書名を冠しているわけですが、その実は、マインドマップに近いです。印欧祖語の語源から放射状に派生語が伸びていくような図です。

語源系の単語集って読み比べると、案外似通っていることに気づきます。例えば

語根:gen
意味:種・誕生

などと見出しがあって、派生語として

gene 遺伝子
generate 発生させる

みたいに列挙されているという形式・語彙のチョイスが似ているので、あまり目新しさが無いんです。この、やや古い本

語源中心英単語辞典

からあまり進歩していないように思えます。語源的にこう辿れるんだよ、と学術的に判明していることを書いているからこうなるんです。

英単語まんだらは、学術的根拠ではなく、著者の個人的インスピレーションに基づいて書かれています。ヨーロッパ系の言語の素となった印欧祖語から、ゲルマン系、ラテン語系、ギリシャ系へと枝分かれしていき、それぞれが現代英語の語彙となっているという言葉の広がりを感じることができます。著者が矢印を書いていて、例えば

nomn 「名前」が基本イメージ

ラテン語系
nominal
 名ばかりの、名目上の、ごくわずかの

nominate 指名する

misnomer 呼び間違い

ignominy 不名誉

ギリシャ系
anonymous 匿名の

synonym 同意語

antonym 反意語

onomatopoeia オノマトペ

pseudonym 偽名

こういう感じです。これが放射状の図で書かれています。この矢印は本当にこういう変遷をしたという意味ではなくて、著者が意味のつながりをインスピレーションさせて書いたものです。印欧祖語から発展した各言語から、豊富な語彙が英語へ帰っていく、英語という言語の豊穣さを感じることができる素晴らしい本です。

元々は、語源系の単語集を読んだのは英検1級の対策のためでした。英検1級は語彙が非常に難しく、全部覚えようとするとキリがありません。できるだけ語の意味を類推して問題を解けるようにするために語源の勉強をしました。

中でも、この英単語まんだらは語のチョイスが英検1級向きで良いと思います。アカデミックな語彙を割と収録しているんですね。上の例で言えば pseudonym なんかがそうで、これはTOEICでは出ない語彙ですが英検1級では出るかもしれません。

TOEICとは違う角度で英語を学びたくなったら、英単語まんだらは非常にオススメです!英検1級の対策になりますし。

『シャドーイングと音読の科学』のレビュー

英語学習においてシャドーイングや音読が効果的であるとはもはや一般的に言われていますが、何故効果的なのかは実際のところよく分かっていないと思います。ただ、安河内哲也先生みたいに実際に英語が物凄くできる人が音読は大事だと言うので、やっぱり効果があるのかな?と経験的に感じていました。年末のRed Bullさんのセミナーでも徹底的な音読が推奨されていましたし。

しかし、Twitterで出会うTOEIC満点取得者は、必ずしも音読推奨派ではなかったのです。あ〜るさんというTOEICで満点を何度も取ってらっしゃる凄い方のツイートで

少なくともTOEICのリスニングでは、本番当日に会場でやらされることは「答えを選ぶこと」だけです。声出しすることではありません。つまり本番に向けた実戦練習としては、答えを選ぶ練習をすれば十分なはずなんです。それがなぜか練習では、必ず声出しまでせよと言われる。謎と言えば謎です。

音読推奨派だった私は、あ〜るさんの発言で、ブレまくっていました(笑)確かに、TOEICは声を出さない試験です。だったら何故TOEICの対策で音読をが推奨されているのだろう?と。

私は音読の重要性を再確認するために、外国語習得における音読の重要性を科学的に説明した本を読んでみることにしました。やはり、何故やるのか?ということを理解したうえでやった方が良いと思うからです。 仕事でも、上司の命令に対してその効果に疑念を抱きながらやっていては成果は出せません。自分が納得して取り組んだ仕事の方が成果が出ませんか?

この本です。


オススメ度(5段階) ★★★★

以下、本の内容を要約していきます。大きく分けて3つの内容で説明します。

  1. シャドーイングをするとリスニング力が向上する
  2. 音読をするとリーディング力が向上する
  3. シャドーイングと音読をすると英語(外国語)を長期記憶しやすくなる

まずシャドーイングをするとリスニング力が向上することについて説明します。

リスニングという行為は、

音を知覚する→意味を理解する

という段階を経ます。母語の場合は知覚の段階が自動化されており負荷がほとんど無く、次のステップである理解に使う時間が充分に取れるため、容易にリスニングを行うことができます。しかし外国語の場合は音を知覚するだけで大きな負荷がかかります。すると意味の理解に使える時間が足りず、例えばTOEICで言えば次の音声が流れてきてしまい、聞き取りができない状態でテストが進行してしまいます。実際の英会話では相手に聞き返す必要が生じてくるでしょう。

シャドーイングは聞こえてきた音をそのまま発音する行為です。これは、音を知覚する行為を自動化するトレーニングになります。このトレーニングを徹底的に行うことにより、知覚が自動化され、意味を理解するために多くの時間を使えるようになります。つまりネイティブの聴覚処理に近づくことができます。

次に、音読をするとリーディング力が向上することについて説明します。この本では、音読とリーディングの関係は先ほど述べたシャドーイングとリスニングの関係とほぼ同じ論理で説明しています。

リーディングという行為は

ディコーディング(文字の解読)→意味を理解する

ディコーディングとはリスニングで言えば音を知覚する段階にあたります。具体的には

  • 文字を見て認知する
  • 知っている語彙として認識する
  • 文字を心の中で発音に変換する

という脳内の作業のことです。黙読していても、大抵の場合は心の中で文字を発音していると思いますので、文字を心の中で発音に変換するという段階を踏みます。認識した文字を心の中で繰返し発音することで記憶を保持し、次の理解の段階に進めることができます。ディコーディングの次の、理解する段階では、リスニングとほぼ同じ脳の働きで処理されます。

リーディングは文字を音に変換するので、実はリスニングよりも1ステップ作業が多いことになります。音読は、文字を発音に変換することを声を出して積極的に意識した形で行うことによって、ディコーディングの自動化を目指す練習になります。自動化ができれば理解に多くの時間を使うことができるのもリスニングと同じです。リスニング同様、知覚段階を自動化することが、ネイティブの処理に近づく方法であるということです。

最後に、シャドーイングと音読によって英語を長期記憶しやすくなることついて説明します。

人が短期記憶を長期記憶に変えるルートには、映像的な記憶と、エピソード記憶と、言語記憶があります。語学学習の暗記においては言語記憶が主になります。言語記憶は、脳内で単語や文の発音を何度もループさせることによって、短期記憶から長期記憶に転化されます。

聞いた音は、約2秒間は脳内に保存されますが、その間に脳内で何度も復唱しなければ忘れてしまいます。2秒間に何度も復唱するためには、音を知覚したり文字を見てから脳内で発音に変換するスピードを増やす必要があります。ネイティブはその過程が自動化されているので、復唱するのが速いため、単語や文を長期記憶に転化させやすいのです。

その過程を自動化するためのトレーニングが、シャドーイングと音読である、というわけです。認識した単語や文を脳内でループさせる作業が高速化されることによって、短期記憶を長期記憶に変えやすくなるのです。

以上がこの本の、シャドーイングと音読が語学学習で効果的であることを説明した部分の要約になります。本文ではもっと実験やデータを用いて論理的に説明されていますので、詳しく知りたい方は是非読んでみることをオススメします。

ではこの説を踏まえて、どのようにシャドーイングや音読を英語学習に取り入れたら良いのか?という話については、また別の記事で書くことを予定しています。