『英文解体新書』のレビュー

最近、凄く良い本を読んだので紹介します。

『英文解体新書』 北村一真

伊藤和夫の英文解釈教室に似た、構造を解釈するのが難しい英文の実例を挙げて、読み方を解説している本です。

挙げている例文はスティーブン・ピンカーや、バートランド・ラッセル等の哲学的な文章や、カズオ・イシグロ、エドガー・アラン・ポーの小説から引用されており、レベルが高いです。日本の英語教育は読み書きが中心だから日本人の英語読解力は高いという言説を聞きますが、難しい大学受験に合格するために英語を勉強し、大学に合格した後に、いざピンカー等の書いた英語を読もうとすると、問題にぶち当たります。全然読めないんですよね。

なぜ英語が読めないかについて、単語力が足りないからだと言う人は多いです。しかし私はこれは間違いだと思います。何故なら辞書を使いながら読んでもそれらの英文の意味が分からないからです。

なぜ英語が読めないのかは、英文の構造が掴めないからだと思います。我々は高校で5文型の考え方を学びます。確かにこれは有効で、これを意識的にでも無意識的にでも分かってないと話になりませんが、この5文型というのは、英文の構成要素の説明をしているだけで、動詞や目的語など各要素の順番の変更については触れてないんですね。SVとかSVOとか習うけど、実際はSから始まらない英文も多いのです。

この本では、そのようにどれがSVOなのか判別するのが難しい文章を体系立てて説明しています。倒置や挿入、省略などについて触れている本はたくさんありますが、この本はなぜ倒置するかということまで説明した上でパターンを挙げて説明しているので、理解しやすかったです。

加えて圧巻なのが、本の終盤に、「破格的な構造」という章があることです。これは、従来の英文法としては間違っている文の読み方を解説した章です。それらは間違っているわけですが、英語で書かれた本を読んでいれば、よく見る構造の文だったりします。難しめの英文を読もうとすれば、文法的に間違った構造さえ読み解かなければならないというのは途方も無い話で、それを丁寧に解説していくこの本は素晴らしいと思いました。

伊藤和夫の英文解釈教室は私は途中で挫折してしまいましたが、この本は難しい割に理解しやすく、最後まで読むことができました。

かなりオススメの本です!特に、とにかく英文を読みたいから読む力をつけたい、と思っている人にオススメします。最近は英語力と言うとしゃべれるか否かばかりが注目され、まさに英会話至上主義が蔓延っています。そういうのと気持ちいいぐらい逆行して、今こそ徹底的に英語を読んでみるのも良いと思います。

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