『英語の語源辞典』のレビュー

今日は語源について書いた本を紹介します。

英語の語源事典―英語の語彙の歴史と文化
オススメ度(5段階) ★★

英検1級の勉強を始めたころ、膨大な量の単語に圧倒されて、語源知識を身に付けて単語の意味を推測して解いた方が良いと思って読んでみました。

そしたら、内容が濃すぎましたね。学習書というよりは英語学の専門書のような内容でした。英語がいかにして伝わったか、語彙を身に付けてきたか、という話から始まり、各単語の語源に入っていくわけですが、ちょっとアカデミック過ぎます。神話の話も多数出てきます。

こういう話が楽しめる英語マニアの方にはオススメですが、TOEICの語彙の学習をしたいという方には全くオススメできません。

英検1級に関しては、多少は点数の足しになったかもしれません。英検1級の語彙はアカデミックですからね。

同じ語源の本だったら、これらの本がオススメです!

語源でたどる英単語まんだら

語源で覚える英単語3600

『直前の技術』はTOEICの基本書

初めてTOEICを勉強する人に1冊だけ本を勧めるとしたら、これを選びます。

新TOEICテスト 直前の技術—スコアが上がりやすい順に学ぶ
オススメ度(5段階) ★★★★★

この本は、小手先のテクニックっぽいタイトルですが、その中身は単にTOEICの解き方の基本中の基本を抑えたものです。

例えばPart5でしたら、4択のうち正しい品詞を選ぶ問題は頻出ですが、そういう仕組で解けるということを知らないと、文全体を読んで、一つずつどれが正しいかを考えて解くハメになります。選択肢がこういう問題です。

(A) rapid
(B) rapidity
(C) rapidly
(D) rapidness

空欄の前後を見て、後ろに名詞があったらAだったり、欠けている要素が無い場合は副詞のCを選ぶなど、TOEICのPart5はそういう思考回路によって解くのが普通の解き方です。空欄前後だけを見て解くのはテクニックかもしれませんが、それぐらいのことをしなければ、初心者の頃はとても時間が足りません。基本的な解き方です。

品詞の問題という問題が毎回必ず出題されていることすら知らなかった私は600点すら取れませんでした。800点を超えたのはこの本をやってからでした。

英語力を身に付けてから高得点を取れば良いと言う人も居ますが、英語力を身に付ける前にこういう解き方で少しでも高い点を取れた方が良いに決まっています。さらに、英語力が付いた後もこの解き方を知っていてより高い点を取った方が良いに決まっています。

小手先のテクニックはいつの時代も批判されてきました。インチキだとか実力じゃないとか言われて。この本は、きっとたくさん売るために、即効性がありますよということを示すために、そういうタイトルをしているんだと思います。でも中身は、単にハイスコアを取る人の思考回路を説明しているだけです。セコいなどということは一切ありません。堂々とこの本のテクニックを使いましょう。試験というのはカンニング等の不正行為をしなければ何をしても良いんです。

今はもっと良書があるかもしれませんが、TOEICの解き方の基本を解説した本としてこの本は決定版です。600点取りたい人も800点取りたい人も、必ず解きましょう!

『キクタン英検1級』は意外と良いです


オススメ度(5段階) ★★★★

英検1級が近付いているので、私は受験しませんが単語集の紹介を。

英検1級の単語集と言えば決定版は

かと思います。確かにパス単は英検1級によく出る単語も出そうな単語も網羅しています。

しかし、旺文社の単語集らしく、堅いですね。大学受験の英単語ターゲット1900みたいな、

単語 意味 例文

という伝統的な構成で、音声にも工夫がありません。

対してキクタンは見出し語が900と少ないため、重要単語の暗記には良いです。音声にも工夫があり、キクタンシリーズでお馴染みの

英単語 意味

をひたすら繰り返すCDとなっています。英検1級の単語は難単語が多いから、こういう力づくの暗記は向いていないという意見もあるかもしれません。ですが私は逆に、難単語だからこそ、そもそも意味を知ってる知らない以前に見たことすら無い単語が多いため、まずは音でその単語の存在を認識することが大事だと思います。単語の連呼を聞いていると、意味は知らないけど単語の存在は知っているという状態になります。例えば

altruism

という単語を聞いていると、利他主義という意味は覚えられなくとも、altruismという音や文字列は覚えます。その後、繰返しキクタンでの学習を続けたり、他の問題集で意味を定着させていけば良いと思います。

決定版はパス単ですが、その前に英検1級の基本語彙を定着させるには、まずはキクタンがオススメです!

※私は英検1級はまだ合格していません(1次試験があと5点でした)ので、あくまで不合格者の意見としてご参考にしてください。

『ネイティブの瞬発力が身につく!超「速音読」英語勉強法』の感想

ネイティブの瞬発力が身につく! 超「速音読」英語勉強法
オススメ度(5段階) ★★★

最近英語の勉強をしていないので、今までに読んだ英語関連の本を紹介していきます。オススメ度の高いものも、低いものも紹介していこうと思います。

この本の主張は至ってシンプルです。

英語を身につけるためには音読が最も適している

というもの。著者の実体験に基づいて、いかに音読が有効であるか、また音読学習を続けていくためのコツがいくつか書かれています。私のブログでも何度か書いてきましたが、英語がめちゃくちゃできる人は、やはり音読をしていますね。

私自身、音読の効果は身を持って体験しています。普通に問題集を解いてても上がらなかったTOEICスコアが、音読を1ヶ月集中してやっただけで900点を超えましたのでね。こちらの記事に書きました。

私がTOEICで900点を突破した方法

音読が有効だと分かっていて自分なりの音読のペースが掴めている人にとっては、あまり目新しい情報は無いかもしれません。情報というよりは、音読でTOEIC満点を始めとする素晴らしい英語力を手に入れた人の体験記、として凄く価値があると思います。そういう音読が効果があったという「証拠」があった方が継続して頑張れますから。特に、音読は地味なトレーニングですし。

得られた情報としては、著者が提唱しているのが

速音読

であることです。いかに音読をするべきかというのは大事なテーマですが、とにかく速く読むという一つの方法論を示して、それによって成果を出したという情報は有益でした。ただ、世の中にはゆっくり音読しなさいと言う人も居て、成果も出ているようですから、速く読むのが最も効果的というわけではないと思いますが。

音読やシャドーイングの効用を説いた本でしたら、科学的に説明した『シャドーイングと音読の科学』の方が読み応えがあって私は好きでした。何故シャドーイングや音読が効果的なのか、科学的な視点から知って、理解を深めた上で勉強したいという人にはこちらの方がよりオススメです!

『語源でたどる英単語まんだら』のレビュー

今日は一風変わった単語集を紹介します。

語源でたどる英単語まんだら
オススメ度(5段階) ★★★★

語源系の単語集は、いくつも読みました。中でもこの本は、語源から各単語に広がっていくことを独特の図で表現しており、とても面白いです。まんだら図に見立ててまんだらという書名を冠しているわけですが、その実は、マインドマップに近いです。印欧祖語の語源から放射状に派生語が伸びていくような図です。

語源系の単語集って読み比べると、案外似通っていることに気づきます。例えば

語根:gen
意味:種・誕生

などと見出しがあって、派生語として

gene 遺伝子
generate 発生させる

みたいに列挙されているという形式・語彙のチョイスが似ているので、あまり目新しさが無いんです。この、やや古い本

語源中心英単語辞典

からあまり進歩していないように思えます。語源的にこう辿れるんだよ、と学術的に判明していることを書いているからこうなるんです。

英単語まんだらは、学術的根拠ではなく、著者の個人的インスピレーションに基づいて書かれています。ヨーロッパ系の言語の素となった印欧祖語から、ゲルマン系、ラテン語系、ギリシャ系へと枝分かれしていき、それぞれが現代英語の語彙となっているという言葉の広がりを感じることができます。著者が矢印を書いていて、例えば

nomn 「名前」が基本イメージ

ラテン語系
nominal
 名ばかりの、名目上の、ごくわずかの

nominate 指名する

misnomer 呼び間違い

ignominy 不名誉

ギリシャ系
anonymous 匿名の

synonym 同意語

antonym 反意語

onomatopoeia オノマトペ

pseudonym 偽名

こういう感じです。これが放射状の図で書かれています。この矢印は本当にこういう変遷をしたという意味ではなくて、著者が意味のつながりをインスピレーションさせて書いたものです。印欧祖語から発展した各言語から、豊富な語彙が英語へ帰っていく、英語という言語の豊穣さを感じることができる素晴らしい本です。

元々は、語源系の単語集を読んだのは英検1級の対策のためでした。英検1級は語彙が非常に難しく、全部覚えようとするとキリがありません。できるだけ語の意味を類推して問題を解けるようにするために語源の勉強をしました。

中でも、この英単語まんだらは語のチョイスが英検1級向きで良いと思います。アカデミックな語彙を割と収録しているんですね。上の例で言えば pseudonym なんかがそうで、これはTOEICでは出ない語彙ですが英検1級では出るかもしれません。

TOEICとは違う角度で英語を学びたくなったら、英単語まんだらは非常にオススメです!英検1級の対策になりますし。

“The 7 Habits of Highly Effective People” の感想

今日はド定番の洋書を紹介したいと思います。凄くオススメです。

The 7 Habits of Highly Effective People

日本では

完訳 7つの習慣 人格主義の回復

として有名な本です。自己啓発本ブームの火付け役となった、基本中の基本の自己啓発本ですね。

自己啓発本と言うと、悪いイメージを持ってる人も多いかと思います。成功する人は読んでないとか、怪しいとか、内容が無いとか。この本は別にそれらの本と一線を画するという程ではありません。成功する方法が書いてあるので、人によっては怪しいと思うかもしれません。

ただ、この本は胡散くさいことや、鬱陶しいことは実は書いてありません。起業や出世などを無理に勧める本ではありませんし、人を出し抜くようなことも書いてないし、簡単に成功する方法も書いてありません。

じゃあ何が書いてあるのかと言うと、人格者になるための思考法が書いてあります。善く生きる、と言っても良いかもしれません。それが7つの習慣の正体です。人のせいにしないで自分が変わる。自分の人生の中で大事なことは何かを見極める。成功のために自己研鑽を積む。そんな意識高そうなことが書いてあります。別に怪しくないですし、7つの習慣を実践できている人が居たら、尊敬できるなぁと思います。

大人のための道徳の教科書みたいなものかもしれません。とにかく、立派な大人のお手本が書かれた本です。

英語学習という視点ではどうでしょうか。私は洋書を読みました。自己啓発本なので分かりやすいだろう、とタカをくくって買ったのですが、この本の英語はなかなか難しいと思います。TOEIC885点(当時)の英語力では苦戦しました。しかも長いので途中で挫折しそうになりますし。

いきなり英語で読むと、理解できなくて厳しいかもしれません。ので、要旨を先にマンガで読んでおくと良いと思います。

まんがでわかる 7つの習慣

まんがでわかる7つの習慣2 パラダイムと原則/第1の習慣/第2の習慣

まんがでわかる7つの習慣3 第3の習慣/第4の習慣/第5の習慣

まんがでわかる7つの習慣4 第6の習慣/第7の習慣/第8の習慣

このシリーズは、内容が分かりやすいだけじゃなく、普通にマンガとして面白いです。私はハマったので全部買って読みました。

セコい成功のための本を読むより、立派な人間になるために 7 Habits を読みましょう。

グプタによる『不思議の国のグプタ』の感想

私のハンドルネームはグプタでございまして、これはもちろん、ドラクエ3でカンダタに恋人を誘拐されたグプタから取ったわけではなく、TOEICの登場人物のグプタから取りました。清涼院流水さんが書いたこちらの小説

DL特典付 不思議の国のグプタ―飛行機は、今日も遅れる
オススメ度(5段階) ★★★★

でネタになっているので、面白いなぁと思ってハンドルネームにしました。

TOEICの問題文の本文は、フィクションです。例えば石油を巡る国際情勢や、あるアメリカ大統領の偉業など、現代社会や歴史をテーマにした内容は絶対出ません。知ってる人と知ってない人で差が付いてしまうからです。そうしたら英語力を計る試験になりません。だったらフィクションにすれば、知識による有利不利がありません。純粋な英語力を計ることができます。たぶん。

ただ、フィクションにしたことによって、何故かそのストーリーは奇妙な特徴を持つようになりました。TOEICの問題文では、いつも飛行機は遅れますし、図書館は閉館しています。人の名前にも特徴があり、何故かグプタという名前の人物がよく出てきます。

そのストーリーのクセというか、「あるある」をネタにした小説が『不思議の国のグプタ』なのです。

小説の前半は、TOEICのあるあるを楽しめるような内容になっています。TOEICマニアの方々なら絶対面白いと感じると思います。

私は後半部分のクライマックスに差しかかっていくところが気に入りました。詳しくは書きませんが、グプタが世界の秘密に気づいて、掟を破ろうとするところなんか、

トゥルーマン・ショー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

みたいなスリルを味わえました。

というかトゥルーマン・ショーとは話がかなり似てますね。ミステリーやSFなどが好きな人なら、『グプタ』はありきたりなプロットと思うかもしれません。作られた世界の秘密に気づくのは、確かに目新しい発想ではないです。清涼院流水さんのようなベテラン作家なら、すぐに書けてしまうのではないでしょうか。

それでも、私は『グプタ』は素晴らしい小説だと思います。ミステリーにありがちなプロットを、TOEICを題材にしてやってしまうところが凄いのです。TOEICの問題を作っている人たちは、英語力を計るというミッションのために、文学や歴史などの臭いを消し去った無味乾燥な世界を表現しようとしているのだと思います。普通の日本人にとってTOEICは無味乾燥な英文でしょう。しかし逆にそれをコンテンツとなってしまった、というところが面白いのです。一流の作家にかかればどんな材料も小説になってしまいます。

この本を読んで

「TOEIC対策の役に立たない」

という声をたまに聞きますが、そりゃそうだろう、と思います(笑)

これを読んでスコアが上がることは無いでしょう。ストーリーの傾向を知ることはできますが。

そうではなく、TOEICをコンテンツとして楽しむことができるようになる、ということが『不思議の国のグプタ』の素晴らしいところです。だから私はグプタなんです。

900点特急の音読を3ヶ月終えて

900点特急の音読により900点を取得したことは以前の記事に書きましたが、今日は続編を書きます。

(こちらは2017年に発売された改訂版ですが、この記事を書いた時は旧版を読んでいました)

音読の方法と回数

3月15日の198回TOEICに向けて私は、3ヶ月間、

の音読を続けました。他のテキストは息抜きに少し『読解特急4』を音読しただけで、やってないと言っても良いぐらいです。あとは模試を2回解きました。

通しで本を最初から最後まで読むのを1セットとして、ほぼ毎日1セット以上は読みました。シャドーイングは各問の音声が2回ずつ流れて来ますので、シャドーイングは1セットで2回音読したとカウントします。

また、基本は1セット通して読むことを毎日続けましたが、それと並行して、1問1問を繰返し読む読み方も行いました。その読み方をする時は、Red Bull TOEIC Academy で教えてもらった方法

  • 普通に読む
  • 速く読む
  • 凄くゆっくり読む
  • 一呼吸で何回読めるか
  • 凄く速く読む
  • 1分で何回読めるかチャレンジ

という方法を採用しました。この方法を採用すると、1問につき5分はかかりました。だいたい1問につき20数回ずつ読んでましたね。凄くゆっくり読むというのがあるのであまり回数は多くありません。

1セット通しの音読(とシャドーイング)と、1問1問を20回以上読む音読。これを毎日繰返しました。正確には数えてないのですが、トータルで、テキストの全ての文を110回〜120回ぐらい読みました。ちなみにその間、黙読による速読、熟読、問題を解答する行為も、数えてませんが相当繰返しました。

3ヶ月でこの音読の数はあまり多くないと思います。途中、1ヶ月間の音読を終えて受けたTOEICで900点を達成したため、かなり失速しました。同時期に通訳案内士試験の合格を受けて、更に気が緩みました。それらの成果は、学習時間、音読の回数という点で強いブレーキになりました。

結果と反省

その気の緩みのせいで、

1ヶ月音読して受けた時 910点

その後も2ヶ月音読を続けて受けた時 915点

という結果でした。ベストスコア更新できたのは良かったものの、この900点特急の音読に対してもっと私は期待していたので、1ヶ月と3ヶ月の音読の結果であるスコアがあまり開かなかったのは正直言って残念でした。900点を超えればベストスコアを更新するのはかなり難しく、どんな勉強法でもそう簡単にスコアが上がるはずはありません。ですからある意味で納得の結果ではあるのですが…。

不思議なことに、Part5が100問、Part6が15セットで構成された900点特急ですが、音読とシャドーイングをしていたら、全体的にスコアが伸びました。特に、915点を取った時はLが480でRが430ですので、リスニングの方が圧倒的に良いです。むしろこの回は明らかにPart5と6で崩れてリーディングの点が伸びなかったです。

Part5と6の問題集を音読してPart5と6以外が全て点が上がったという……。

リスニングの伸びは、今までやったことない回数のシャドーイングを行ったからだと思います。900点特急のダウンロード音声はかなり速いです。慣れてきたら1.125倍速でやりました。こういうスピードで負荷をかけるトレーニングも初めてだったので、今まで取ったことがないスコアが出ました。やはりシャドーイングはリスニングに関してはかなり効果が出ますね。

Part5と6で崩れてRが430ですから、Part7はかなりの正答率だと思います。これも音読の効果でしょうか。ただ、時間をかけ過ぎてしまいPart5に時間を回せなかった(私はPart5を最後に解きました)ので、まだまだ改善の余地があるPartだと思いました。

Part5で時間を使えなかったのは、ペース配分のミスだと思います。今回、直前もほぼ音読しかしなかったので、200問を通しで解くリズムというのがイマイチでした。やはり直前1週間や前日は、模試を何回かやった方が良いと思いました。

スコア的には1ヶ月音読して910で3ヶ月音読して915でしたから、ひょっとしたら1ヶ月で止めるべきだったのかもしれません。もしくは、スコア5点以上に経験値を手に入れていて、実はスコアにまだ現れていないだけで効果があったのかもしれません。それは、今後受験したりして自分の感覚で感じ取っていくしかないでしょう。

ただ、900点特急を1ヶ月音読し続けることの効果は紛れもないものだと思いますので、これについては自信を持って他人にオススメできます!900点の壁を破れないという方は是非トライしてみてください。

“Who Moved My Cheese?” の感想

昔読んだ洋書をふと思い出したので、思い出しながら感想を書きます。まだ大学2年生で、希望に満ち溢れていた時に読みました。

Who Moved My Cheese

日本では『チーズはどこへ消えた?』というタイトルで邦訳が出版されました。原題を直訳すれば「誰が僕のチーズを動かした?」ですが、敢えて「チーズはどこへ消えた?」とするところが日本語っぽくて良い訳ですね。

ちなみにWho moved my cheese? という構文は、疑問詞がそのまま主語になるから倒置は起きず、動詞も過去形のままという、高校受験でちょっと曲者の文法ですね。

本の内容に話を戻します。

アメリカの自己啓発本らしく、伝えたいテーマは非常にシンプルで、それを冗長に繰り返して伝えるタイプの寓話です。有名な”The Goal”とかもそうでしょう。

この本のメッセージは1つ

変化し続けることが善である

ということです。とにかく動きまわった者がチーズを得たというシンプルなストーリーはその1つのメッセージを伝えるために書かれています。この話の中ではその場に留まった者は何も得られません。

このメッセージは私は好きなのですが、当然ながら反論があります。

変化しない方が良いこともある

という主張です。日本では『バターはどこへ溶けた?』というパクり本が存在し、その本では、その場に留まった者が得をする話が書かれています。

これは、どちらもありうることを主張しているので、どちらも正しいです。ある状況ではどちらかが正しくどちらかが正しくない、ということに過ぎません。

例えば転職などがそうではないでしょうか。”Who moved my cheese?”に従って行動すれば、現状を改善するために、積極的に転職をした方が良いと考えます。上手く転職すれば給料が上がって人間関係も良くなってハッピーになりますが、統計では転職して給料が下がる人はかなり多いらしいです。そういう人は転職せず、前の会社に残った方が良かったのかもしれません。

変化した方が良いこともあるし、変化しない方が良いこともある。これは正しいです。ですが、何も言っていないのと同じです。

私としては、ただ待ってるだけでは状況は改善しないと思っているので、”Who moved my cheese?”的な考え方は好きです。

使われている英語に関しては非常に平易で大学生の時の私でも読めました。メッセージがシンプルで、内容も面白く英語も読みやすいので、これは洋書の入門としてかなりオススメの本です。

私がTOEICで900点を突破した方法

TOEICで900点を突破した時の学習記録については、こちらの記事に書きました。今日はその学習がなぜ必要でどのように効果があったのかという考察を伝えます。尚、どうしてもスコア帯によって必要な勉強法は異なりますので断っておきますが、私が伝えられるのは885点から910点に上がった時の方法です。

※こちらの記事はTOEICの問題がPart5が40問出題された時代のTOEICについての記事ですので、ご注意をお願いします。

課題の認識

私の課題は、制限時間内にリーディングが全問解き終わらないことでした。TOEICで885点と言うと全問解ききることができるだろうと昔は思っていたのですが、模試でも本番でも、いつもリーディングで3問ぐらい塗り絵(時間が足りなくなって勘でマークすること)していました。これを全問解ききるスピードを付ければ900点は取れるだろうと思っていました。逆に言えば私はPart7の正答率などはかなり高かったのです。時間さえあれば正解にたどり着けるタイプの受験者でした。

何故塗り絵をしてしまうのか

私はいつも、Part5に19分ぐらいかけていました。分からない問題に遭遇すると1分ぐらい悩んでしまい、結局勘でマークする、ということがよくありました。その結果Part7で3問ほど塗り絵していました。これは非常にもったいないことです。

塗り絵を解消するためにどうしたら良いのか

リーディングで手強いのは、何と言ってもPart7です。ここを速く読めれば、かなりタイムを短縮できます。しかし、英文を読むスピードを上げることは、一朝一夕にはできません。

それよりも、全体の時間配分を見直すことにしました。よく言われるのが、Part5に14分、Part6に6分、Part7に55分という時間配分だと思います。これを強制的に実行するための手段が、Part5を最後に解くという方法です。焦って解くと1問に1分とかかけられないので、Part5で無駄な時間を使わないで済むんですよね。ただ、今まで19分かけていたPart5を14分で終わらせて、できれば正答率を上げたいので、やはりPart5の強化は最重要課題でした。

そこで、JunさんというTOEICで何度も満点を取得している方が仰る900点特急の音読という勉強法を始めました。

900点特急の使い方

(こちらは2017年に発売された改訂版ですが、この記事を書いた時、私は旧版の本を読んでいました)

この本の効果的な使い方を説明しますが、実際は900点特急の中で推奨されている勉強法を実行したのとあまり違いはありません。実は本の序盤に書いてあったのです。それを今まで実行していなかった私が悪かった。さて方法は以下の通りです。

    1. 問題を解く、解説をじっくり読んで理解する
    1. リスニング用音声を聞きながらテキストを音読、即ちオーバーラッピングする
  1. シャドーイングと音読をする

基本的には以上の順番で行いましたが、声を出せない環境で勉強する時は黙読で回答する→解説を読むというところに戻ったりしていますので、上記の過程を何周もやっているという感じです。この辺りの話は、前回の勉強記録の記事の方に詳しく書きました。

900点特急の学習過程での変化

1冊のテキストのみを使い続けていると、自分の状態が変化します。

最初に訪れた変化は、答えを覚えたため、間違えなくなったということです。ただ、まだ選択肢を見なければ答えは分かりません。選択肢を見ると、間違えずに回答を選べるという状態です。これは、答えの選択肢を見なければ答えを思い出せない、又は外れの選択肢も見なければ答えを選べない、という点でまだ学習途中の段階です。ちなみに、答えは全て回答根拠と合わせて覚えることが大事です。

次の変化は、選択肢を見ずに正解を出せるようになったということです。ただ、前後の単語などを見て、少し考えて思い出すというレベルです。

最後に、問題を見た瞬間に答えが分かるという状態になりました。ここまで来るとさすがに、Part5の他の問題集を解く能力もかなり上がっていました。だいたいの問題が、900点特急の問題のどれかのパターンに当てはまるんですね。900点特急は問題の空欄になっていない箇所についてもTOEIC頻出の表現が頻出の、非常に美味しい問題集です。空欄以外の部分もけっこう覚えてしまっているので、同じ表現が出題されると、何となく解けます。

900点特急学習を終えた効果

900点特急の全問の答えを暗記して即座に解ける状態でTOEICに臨んだ私は、それまでと比較して確実にPart5で瞬殺できる問題が多いと感じました。Part5を13分で攻略でき、私は自分の公開テスト受験歴の中で初めて塗り絵無しで試験を終えることができました。結果、正答率も向上していました。

また、Part7や、リスニングパートにおいても効果がありました。何度もシャドーイングしていたので、TOEIC本番ではかなりリスニングの調子が良かったです。そして、これは何となくとしか言えないのですが、Part7を解くのも早くなったと思います。これらの効果は、TOEIC受験後に読みましたがこちらの本『シャドーイングと音読の科学』で説明されている効果が実際にあったのだと思います。

Part5形式の問題が100問と、Part6形式が10題しか収録されていない900点特急を何度も解き、音読とシャドーイングをしただけですが、TOEICにおける全パートで得点力が向上しました。Part4やPart7などの長文も、結局は短文の組み合わせで構成されているので、一文一文の理解を深めるPart5の繰返しは効果があるのだと思います。実は900点特急はかなりエッセンスの詰め込まれた問題集だったのです。

同じ問題集を何度も解く・読むことの是非

私は昔から、同じ問題集を何度も解くのが嫌いでした。大学受験の時も、特に試験直前などは問題集は多くても2周ぐらいしか解かなかったと思います。勉強は飽きずに続けることが大事だと思っていて、同じ問題集を何度も解くと飽きるので、あまりやりませんでした。

しかしTOEIC業界では、HAMMERさんとか凄いTOEIC講師の方はみんな口を揃えて

「一冊の問題集を徹底的にやれ」

と言っています。私は今まで逆らっていたわけですが、今回実行してみて、その効果を実感しました。

また、この勉強法はテキストを1冊しか使いませんので、非常にシンプルで勉強しやすいです。日々の仕事で忙しいサラリーマンに向いている勉強法だと思います。特に一日の勉強時間が2時間ぐらいしか取れないのならば、一冊に絞って深く定着させるのが良いと思います。

最後に一言

900点特急は一冊で相当効果が出る、非常に美味しい問題集です。しかし問題が難しいこともあり私のように1回だけ解いて本棚に眠らせている人は多いと思います。もし900点の壁に阻まれて、勉強の指針を見失っている方が居らっしゃったら、是非900点特急のやり込みに挑戦してみてください。きっと効果を得られると思います。